豆腐とテンジャン(된장(トェンジャン))で泣かせる一杯が、宮中の空気を変える。
第4話は、大王大妃(대왕대비(テワンテビ))主催の料理比べが本戦です。題は「孝(親への思い)」、必須素材は豆腐とテンジャン(된장(トェンジャン))。水刺間(수라간(スラッカン))に漂う敵意と妨害のなか、ヨン・ジヨンは重さで押さず、記憶に届く「軽い一杯」で勝ちにいきます。
あらすじ(ネタバレあり)

王イ・ホンは宮中の規律を示すため料理比べを許可します。対戦相手は厨司オムとメン。条件は「孝」をテーマに、豆腐とテンジャンの使用が必須。水刺間では男料理人たちが露骨に協力を渋り、刃物を鈍らせるなど小さな妨害が続きます。
当初の重い煮込み案を捨て、ジヨンは清澄系のスープへ舵を切ります。鍵はほうれん草と、朝鮮半島南部で親しまれる小型のシジミ類・재첩(ジェチョプ)。豆の旨味(テンジャン)に貝の旨味を重ね、青菜の香りで抜けをつくる設計です。テンジャンは塩気と発酵香が出過ぎない量に抑え、豆腐は軽く水抜きしてからスープと同じ温度帯で投入。湯を沸騰させず、最後に胡麻油を湯気へひと滴だけ乗せ、香りを立ち上げます。
審判役の大王大妃(テワンテビ)は一口で箸を止め、母の面影を想起して涙。判定はジヨンの勝利です。怒りに傾いた王は敗者の片腕切断を命じかけますが、ジヨンと大王大妃の進言で処断を撤回。水刺間に久しぶりの「慈悲」が戻ります。
その夜、酒に沈む王は夜食を望み、ジヨンは寄り添って小皿を整えます。温度の合う一品が王の心を静め、二人は口づけに至ります。一方、側室カン・モクジュは敗北に安堵せず、王とジヨンの距離を裂くための火種をさらに投下。宮中の緊張は高まったまま次回へ持ち越されます。
登場人物の動き(第4話時点)
- ヨン・ジヨン:題「孝」を「記憶に届く温度と香り」に翻訳。豆腐×テンジャン×ほうれん草×재첩(ジェチョプ)の清澄スープで勝利し、水刺間の統率を取り戻します。
- イ・ホン(王):強権と迷いが同居。処断を命じかけるも撤回し、夜には弱さも見せます。
- 大王大妃(テワンテビ):スープで涙。権威で「慈悲」を後押しします。
- カン・モクジュ:嫉妬と策動を継続。王とジヨンの関係を揺らす導線を増やします。
- 厨司オム/メン:敗北。処罰は回避されるものの、以後の立場は揺らぎます。
名シーン/台詞
- 大王大妃が一口で嗚咽する瞬間。味が「政治の空気」を変えるシリーズの核が、最も素直に出た場面です。
- 王の処断命令からの撤回。暴君像の陰に、理性と孤独が透けます。
料理“ガチ解説”|第4話「清澄テンジャン・スープ(豆腐・ほうれん草・재첩(ジェチョプ))」
第4話(清澄テンジャン・スープ)
※以下は料理技法の専門解説。劇中描写(豆腐・テンジャン・ほうれん草・재첩(ジェチョプ)による清澄スープ)は一次情報・主要レキャップで確認済み。塩分%・火加減などの数値は再現ガイドとしての一般理論です。
コンセプトと到達点
- 重さで押さず、温度と香りで泣かせる
- テンジャンの豆由来の旨味に、貝の旨味を重ね、青菜の“青い香り”で抜けをつくる
- 見た目は澄み、口当たりはやわらかく、後口に胡麻の余韻が一拍だけ残る
材料(2人分)
- 水 600ml
- 재첩(ジェチョプ)またはシジミ 250g(砂抜き後の殻付き)
- 昆布 4×4cm 1枚
- テンジャン(된장(トェンジャン)) 10〜14g(塩分と銘柄で調整)
- 豆腐(木綿) 150g(1.5cm角)
- ほうれん草 60g(根を落とし、よく洗う)
- 白ねぎ(白い部分) 10g(極薄小口)
- 胡麻油 1〜2滴
- 塩(仕上げ調整用) 適量
目標塩分:最終液量に対して約0.6〜0.8%(家族向けは0.6%、大人向けは0.7〜0.8%)
事前準備
- 貝の砂抜き
- 2%食塩水(海水目安)に浸し、冷暗所で2〜3時間。途中で1回水替え
- 貝殻をこすり洗いして泥を落とす
- 豆腐の水抜き
- キッチンペーパーで包み、軽く重しをして15〜20分
- 1.5cm角に切り分ける
- ほうれん草の下処理
- たっぷりの湯に1%の塩を入れ、根元→葉の順に10〜15秒だけ下ゆで
- すぐ氷水で急冷、強めに水気をしぼる(青香を残す)
出汁と“澄ませ”の火加減
- 鍋に水と昆布を入れて中火弱で加熱。小さな気泡が立つ手前(80℃前後)で昆布を取り出す
- 砂抜きした貝を入れ、ふちが揺れる程度の弱火で7〜10分。殻が開いたら火を止め、丁寧にアクをすくう
- 濁りを避けたい場合は、ここで一度ペーパーで軽く濾す(旨味のロスを避けるなら、上澄みだけ掬って次工程へ)
ポイント:煮立たせないこと。目安は90℃未満をキープ。湯面に大きな沸騰が起きたら火が強い合図。
テンジャンの溶き方(濁り・臭い対策)
- 小さめの器に鍋の煮汁をおたま1杯取り、テンジャンを溶く
- 茶こしでこしながら鍋へ戻す(大豆の粗い粒子を抑え、澄みを保つ)
- 味をみて塩分0.6〜0.8%に調整(テンジャンの塩分により食塩追加の要否が決まる)
具材の“温度合わせ”
- 豆腐は別鍋の湯で70〜75℃に温めておき、仕上げ直前に本鍋へ移す(温度差による味のボケ防止)
- ほうれん草は提供1分前にスープで温度だけ合わせる(再加熱は最短)
仕上げと盛り付け
- 火を止め、胡麻油を湯気に1〜2滴落として香りを立てる
- 椀に豆腐→ほうれん草→貝の順で配し、澄んだスープを静かに注ぐ
- 白ねぎ極薄切りを少量、中心にのせる
提供温度:椀内78〜82℃が目安。熱すぎると香りが飛び、低すぎると塩味が立つ。
タイムライン(目安)
- T-30分:砂抜き終了、洗浄
- T-20分:昆布水加熱→80℃で昆布を引き上げ、貝投入
- T-12分:アク引き、上澄み確保
- T-8分:テンジャンを溶いて戻す→塩分調整
- T-5分:豆腐の温度合わせ開始
- T-2分:ほうれん草の温度合わせ
- T-1分:胡麻油、白ねぎ→盛り付け→提供
失敗例と回避策
- 濁る:強火で沸騰させた/テンジャンを直入れした→弱火維持、別器で溶いて濾す
- 塩辛い:テンジャンの量が過多→煮汁または湯で希釈、塩分は最終0.6〜0.8%で管理
- 臭いが立つ:貝の砂抜き不足、アク取り不足→2%塩水での砂抜き徹底、浮きアクは逐次除去
- ほうれん草が黒ずむ:下ゆで過多/再加熱しすぎ→短時間下ゆで+氷水、最後に温度だけ合わせる
- 豆腐が崩れる:水抜き不足/温度差→軽い水抜き、別鍋での温度合わせ
代替・応用
- 貝:재첩(ジェチョプ)が無い場合はシジミやアサリで代替
- 出汁強化:いりこ=멸치(ミョルチ)を少量加える場合は、苦味を避けるため頭と内臓を除き、弱火で短時間
- 子ども向け:塩分0.4〜0.5%、白ねぎ・胡麻油は控えめ
- 精進風:貝を使わず、昆布+干し椎茸戻し汁で旨味を補う(テンジャンは少量に)
一口の設計(味覚の流れ)
湯気の胡麻香り → 貝の旨味が先に立つ → テンジャンの丸みが包む → ほうれん草の青い香りで抜ける。ここまで約7〜9秒を想定。
衛生・保存
- 当日中の提供が基本。余った場合は粗熱を取り、2℃前後で保管し24時間以内に再加熱(沸騰はさせず、80〜85℃で戻す)
- 貝は加熱後に殻を外し、身だけ保存すると風味の劣化が遅い
- 貝アレルギーの来客には必ず事前確認
感想・考察
豪華さや濃度で押さずに「温度・香り・塩分の引き算」で泣かせる選択が印象的でした。清澄スープにしたことで、テンジャンの重さを抑えつつ、豆と貝の旨味の相乗を前面に出せています。大王大妃の涙と王の処断撤回が同じ一杯でつながり、料理が言語であり政治の媒介でもあるというシリーズの核が明確になったと思います。終盤の夜食から口づけへの流れは、ジヨンの「生存=創作」が私的な感情と衝突し始める合図として機能していました。
まとめ
豆腐とテンジャンという制約の中で、ヨン・ジヨンが「孝」を味に翻訳して勝利をつかむ回でした。水刺間は一旦の和解へ向かいますが、宮中の緊張は依然として高いままです。料理が人の記憶と判断を動かす力を、静かな一杯で証明したエピソードだと感じました。
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