【巫女と彦星】第12話あらすじネタバレ|“終わりの祓い”と約束のキス——見えない世界の先で

巫女と彦星

📝 運命を越えて ― 涙がつなぐ新しい朝

最終回となる第12話は、長く尾を引いたボンスの悔恨ヨムファの執着を、ひとつの儀式で“ほどく”一時間。学園の温度と“禁忌の家”の闇が再び交差し、祓いの再設計——つまり「最初の間違いを正しくやり直す」ことで物語に区切りをつけます。結末では、ギョヌの**“霊眼が閉じる”静けさと、ソンアと交わす約束のキス**が、長旅の余韻を優しく締めくくりました。


🎬 あらすじ(ネタバレあり)

出典:tvN公式

夜明け前、“禁忌の家”の前でソンアは立ち止まる。ここから始まった祓いを、ここでやり直すと決めて。長く尾を引いた二つの未了――ボンスの悔恨(伝え損ねた想い)とヨムファの執着(手放せない喪失)を、同じ祭壇に並べて扱う覚悟を固める。

準備は大仰ではない。塩の線を引き、反射鏡を配置し、鈴を吊す。最後に、ソンアは自分の掌に薄く護符を貼り、**「手の温度」**を効かせるための小さな仕込みを終える。今日は“大技”ではなく、合意と触覚で結び目を解く日だ。

まずは呼びかけから。ソンアは輪の中心でボンスの真名をきちんと三度唱え、応答を三度受ける“呼応の手順(=三唱)”を踏む。返ってくる声は最初かすれていたが、指先を重ねるたびに輪郭が濃くなる。ボンスはソンアの**“器”**にかかる負荷を自覚しており、触れられた瞬間だけ静まる自分を苦い顔で受け止める。

次に、悔恨の核へ。ソンアは破片のまま残る銀の指輪(ボンスが戦場で託され、返せなかった想いの象徴)を器に載せ、土と布で包み直す。「返す」「持つ」の二者択一ではなく、**“ここで弔い、土に返す”**という第三の選択を提示する。ボンスは頷き、指先がわずかに震える。

そこへヨムファが現れる。怒りはまだ熱いが、手には何も握っていない。ソンアは一歩退き、**「供物の連鎖を、ここで終わらせよう」**とだけ告げる。長く尖っていたヨムファの背筋が、ほんのわずかに緩む。彼女は視線を下ろし、ソンアの並べた器に目を留める。

祓いの再設計は二重に進む。内側では、ソンアがボンスに**「離れる条件」を言葉にして手渡す――未了を弔い、名前を確かめ、合意の上でこちら側から手を放すこと。外側では、仲間たちが結界の継ぎ目**を見張り、邪な揺さぶりを鈍らせる。儀式は派手さを欠く代わりに、呼吸の同期がはっきりと効いていく。

やがて、家の奥で息を吐くような音がする。閉じた窓が微かに鳴り、灯りがひと呼吸ぶんだけ揺れる。ソンアが「ここまで来たね」と囁くと、ボンスは**「もう、彼女を傷つけない」**と短く答え、離脱=別れを選ぶ。ソンアは礼を述べ、掌から護符の熱を静かに外す。

ヨムファの番が来る。彼女は長く握りしめてきた喪失を、“供える”ことで力に変えてきた。しかしソンアは、「供物にしないで、悲しみとして抱えて」と道を指す。ヨムファはゆっくりと頷き、かつて受け取った御守りのスカーフを胸元で握り直す。供物の回路が、そこで静かに閉じる。

外の風が変わる。遠くの犬が吠えるのをやめ、空気の粘りが抜けていく。ソンアは最後の浄めの鈴を三度振り、土へ返した指輪の器を丁寧に埋め戻す。祭壇の灯がひとつ、またひとつ、役目を終えたように小さくなる。

静けさの中、ギョヌが目を開ける。まず耳鳴りがないことに気づき、次に、視界の端に“何も”いないことを確かめる。ソンアが「もう、見えない?」と問うと、ギョヌは深く頷く。ふたりは言葉を多く重ねない。手の温度で十分に伝わるからだ。

エピローグ。校庭のざわめき、弓の弦が鳴る乾いた音、いつもの下校路。ヨムファは供えない祈りを覚え直し、ソンアは見えない世界の伴走者として現場へ戻る。ギョヌは的の中心だけを見る訓練を、ただの訓練として続ける。恐怖の名残は完全には消えない。けれど、手を伸ばせば届く距離が、また戻ってきた。物語は、その静かな呼吸のまま、幕を閉じる。


👥 登場人物の動きと関係性

  • ソンア(チョ・イヒョン)
    未了(ボンスの悔恨/ヨムファの喪失)を祓いの再設計に組み込み、〈名前・合意・手の温度〉で決着へ導く。
  • ギョヌ(チュ・ヨンウ)
    祓いののち**“霊眼が閉じる”状態に回復。ソンアと約束のキス**で日常への帰還を確かめる。
  • ボンス
    ソンアの“器”を守るため、自ら離脱を選択。未了の感情を“別れ”に変える。
  • ヨムファ(チュ・ジャヒョン)
    供物の連鎖を断つ選択へ。怒りの手を下ろし、喪失を受け入れる第一歩を踏む。
  • ジホ/仲間たち
    学園側のセーフティネットとして場を温め、結界・陽動の後方支援で最終局面を下支え。

🎯 名シーンと印象的な要素

  • 祓いの“やり直し”:大技ではなく、〈名を呼ぶ/触れる/合意する〉という人間的作法で結び目を解く設計が秀逸。
  • 供物の連鎖を止める宣言:喪失を“捧げ物”に変えないという、痛みへの倫理。
  • “見えない”へ帰る静けさ:ホラー装置が畳まれ、音の少ない余韻が流れるラスト。
  • 約束のキス:再会の証明を過剰に語らず、温度で伝える終幕。

🌟 感想・考察

最終回は“倒す”より“畳む”を選びましたね。大技の見せ場ではなく、合意・真名・手の温度という人間的な作法で着地させたことで、物語の倫理がぐっと鮮明になったと思います。過去を消さず手順だけを正す祓いの再設計は、未了を「正しい別れ」へ変換する方法としてとても誠実でした。ボンスが器を壊さないために自ら離脱を選ぶ流れも、加害/被害の単純化を避け、相手を守るための別れという視点を提示しています。ヨムファが供えるのをやめて悲しみを抱く側へ戻る線も、喪失を力の燃料にしないというメッセージを静かに確定させました。

演出の抑え方も好感でした。鈴や塩、呼吸の同期など“音の小さい儀式”で臨界を越え、最後はギョヌの霊眼が閉じる静けさへ。能力の誇示ではなく生活の回復をゴールに据えた判断が、この作品らしいですよね。だからこそ約束のキスは“装置の終幕”ではなく“日常の再開”の合図として機能し、後味に温度を残します。欲を言えばヨムファの転換はもう半歩だけ描写が欲しかったものの、シリーズ全体で積んだ“供物の連鎖”への警鐘と霊母の犠牲が、その必然性を十分支えていました。最終的に手元に残るのは、手を伸ばせば届く距離という小さく確かな幸福——この余韻が、とても良かったです。


📂 まとめ

最終回の到達点は、とてもシンプルでしたね。合意・真名・手の温度という小さな作法で、長く絡まっていた未了を祓い直す。ボンスは“器を守る”ために自ら離れることを選び、ヨムファは供えるのをやめて悲しみを抱くという、痛みへの成熟に辿り着く。大きな勝利のファンファーレではなく、間違えた手順だけを正す静かな決着が、この物語らしい誠実さを最後まで保っていました。

そして、ギョヌの霊眼が閉じる選択は、超常の物語を“終わらせる”だけでなく、二人を生活へ戻すための確かな合図でした。だからこそ、ラストの約束のキスは儀式の余韻ではなく、日常の再開を告げる“始業ベル”のように響きます。もしもう一度振り返るなら、各話に散らばった〈三唱手の温度供物/祈り〉の反復を見ると、設計の一貫性がよりくっきり見えてくるはずです。派手さよりも正しい距離を選び取った結末——残るのは、手を伸ばせば届く距離という小さく確かな幸福でした。


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