暴君のシェフ 第7話 あらすじネタバレ|雨の日の東莱パジョンと“特注の鍋”

暴君のシェフ

暴君の支配に、調理場の哲学が真っ向から挑む。

素材の差は、工程で覆す。
第7話は、対外“料理競演”の本番突入前後。王イ・ホンと待令熟手(대령숙수/テリョンスクス)ヨン・ジヨンは、特注の鍋を求めて宮外へ。雨が降りしきるなか、**東莱パジョン(동래파전/トンネパジョン)**が合図となり、私情と国益が同じ卓に並びます。

🎬 あらすじ(ネタバレあり)

出典:tvN公式

明の使節が押しつけた料理競演の本番を前に、ヨン・ジヨンは素材差を工程で覆すための切り札として、加圧と密閉を厳密に制御できる特別な鍋の必要性に気づく。宮中の台所では到底用意できないと判断し、王イ・ホンの黙認のもと宮外へ。向かう先は、朝鮮の偉大な発明家・**張英實(チャン・ヨンシル)**の流れを汲むと噂される職人だった。

辿り着いた小屋にいたのは、人里を避けて暮らす発明家チャン・チュンセン。ジヨンは“素材よりも圧・温度・時間の設計が旨味を引き出す”と理を尽くして鍋の製作を頼むが、頑なな彼は耳を貸さない。やがて空が暗くなり、雨脚が強まる。そこでジヨンは発想を変え、彼の郷里・釜山の名物《東莱パジョン》を雨の軒先で焼きはじめる——“雨の日に食べるのがいちばん”という料理の記憶で、心を動かす作戦だ。香りに釣られて姿を見せたチュンセンは一口で表情を緩め、ついに鍋づくりへの協力を承諾する。

同じ頃、宮中では済山大君が王の不在を突く策を進め、明の一派と結託して刺客を差し向ける。標的はジヨン。外での用達中、彼女は危地に晒され、負傷しかけるが、密かに護衛についていた王と近衛がこれを阻み、事なきを得る。政治の暗い流れが、料理競演の場にまで影を落とし始める。

鍋の試作は、加圧→放圧→追い抽出の段取りが合うまで何度も失敗を重ねる。圧が逃げる、蓋が密着しない、抽出が薄い——工程の調整を繰り返し、ついに実戦投入に足る出来へ。雨はなお降り続き、競演の会場では“雨の日の東莱パジョン”が導入の合図として掲げられる。やがて王とジヨンは、緊張が満ちる会場へ劇的な合流を果たし、対外競演の幕が本格的に上がる。

終盤、王は「勝て。勝てば《望雲録》を探す」と約し、ジヨンは小さく頷く。素材の差は、工程で覆す。道具から組み上げた勝ち筋を携え、ふたりは次話へ続く本戦に挑む。

👥 登場人物の動きと関係性

王 イ・ホン(이헌/イホン)

宮外で密かにジヨンを護衛しつつ、審級者としての眼を保つ。私情と責務を同じ卓に載せ、競演を国家の面目回復の機会へ転化しようとする。

ヨン・ジヨン(연지영/ヨン・ジヨン)

工程で不利を覆す方針を貫き、職人を動かして**鍋という“道具”**から勝ち筋を設計。刺客をかわしながら、競演の舞台に間に合わせる。

カン・モクジュ(강목주/カン・モクジュ)

水刺間への介入を続け、主導権を奪う機会をうかがう。

済山大君(제산대군/ジェサンデグン)

政治的空白を狙い、外圧と手を結ぶ動きを匂わせる。

🎯 名シーンと印象的なセリフ

  • 「最高の素材が、最高の料理を保証するわけじゃない」——道具と工程が味を作るという、作中哲学の宣言。(ヨン・ジヨン)
  • 「……粉が立っているな」——一口で粉の存在を看破し、審級者としての資質を強く刻む。(イ・ホン)
  • 「勝て。勝てば望雲録を探す」——私情と国益を同じ卓に載せる条件提示で、競演へ火を点ける。(イ・ホン)

🍳 料理のガチ解説

※以下は料理技法の専門解説です。劇中の料理要素と工程は一次情報・主要レキャップで確認済みであり、記載の数値・手順は再現のための一般的な料理理論および衛生ガイドラインに基づきます。

対象エピソードと料理

エピソード:第7話
主料理:東莱パジョン(동래파전/釜山・東莱の郷土パジョン)
副要素:特注の鍋(加圧・密閉器)による高効率抽出(高麗人参系スープを想定)


東莱パジョン(“雨の日”仕様)

01 コンセプト/味設計

  • 外パリ・中とろ。長ねぎの束感(繊維の線)を残し、油多めの浅揚げ焼きで香ばしさを作る。
  • 雨の日の高湿度を想定し、生地はやや硬め(流動性を抑える)に設定。

02 標準配合(26cmフライパン1枚・目安)

  • 長ねぎ(太めを長さ12–14cmに切る):120–150g
  • 小麦粉:70g/米粉(上新粉):30g/でん粉(片栗または馬鈴薯):10g
  • 水:110–130g(気温湿度で調整)
  • 卵:½個(25–30g)
  • 塩:生地総量の0.8%/胡椒少々
  • 具(任意):牡蠣・イカ・牛細切り少々(各下粉を薄く)
  • 焼き油:25–35ml(表面全体が“浅い油膜”になる量)
  • つけだれ:醤油2:酢1:水1+ごま少々+粉唐辛子少々

03 仕込み(“雨の日”対策を含む)

  1. 粉体をブレンド:小麦粉+米粉+でん粉を混合(米粉20–30%でクリスプ、でん粉で歯切れ)。
  2. 冷水+卵で溶く(氷水推奨)。軽くダマが残る程度で止め、練らない
  3. 長ねぎは縦の繊維を活かすため長めカット。軽く塩をして5分置き、水分をペーパーでふく。
  4. 具材(牡蠣等)は水気を切り、薄く小麦粉。においが気になる場合は酒・塩で5分下味。
  5. 湿度が高い日は水を5〜10%控えめにし、焼き中の追い油で薄い揚げ効果を足す。

04 焼成プロトコル(浅揚げ焼き)

  1. フライパンを中強火で予熱→油を全体に広げ薄い油面を作る。
  2. 長ねぎを先に敷き詰め、片面に軽く焼き色(約40–60秒)。香りを立てる。
  3. 生地の7割量を上から回しかけ、具を散らし、残りの生地を糸状に格子で追加。
  4. フチに追い油を小さじ1〜2。3〜4分で下面をしっかり色づけ。
  5. 大きめの皿をかぶせて反転→さらに2〜3分。必要なら再度少量の追い油。
  6. 仕上げに卵少量を表面へ薄く流し、艶と一体感を付与(任意)。
  7. 網で30秒だけ立て掛けて余分な油を切る→すぐ提供。

05 トラブルシューティング

  • ベチャつく:生地が薄い/油不足→水を5〜10%減らし、油を増やす。
  • 割れる:長ねぎが動く→最初にねぎを軽く焼き付け、生地を2段階で流す。
  • 焦げる:火力過多→中火寄りで時間を稼ぎ、追い油で色を作る。
  • 剥がれない:フライパンの温度不足→予熱を十分に、最初の3分は触らない

06 衛生・提供

  • 牡蠣や二枚貝は加熱中心温度63℃以上。冷凍品は解凍ドリップを除去。
  • 提供前に断面を少し持ち上げ、油膜と蒸気が抜けているか確認。
  • つけだれは直前調合(酢の揮発を活かす)。

特注の鍋(加圧・密閉器)での高効率抽出

01 コンセプト/ターゲット

  • 短時間で旨味密度を上げる
  • 加圧→放圧→追い抽出の三相で、同じ素材を工程設計で一段上へ。

02 安全と仕様(一般家庭用圧力鍋の目安)

  • 高圧:0.8〜1.0 bar(約12–15 psi)/内容液温:115〜121℃
  • 蒸気・圧力事故に注意:バルブ・パッキンの確認/過充填禁止(容量の2/3以下)。

03 想定レシピ(高麗人参系スープ/サムゲタン風・2人前)

  • 若鶏(丸・内臓除去):800–1,000g(熱湯10秒→冷水で下茹で洗い
  • もち米(洗って浸水2–3h):80–100g
  • 乾燥高麗人参:15–20g/なつめ:4–6個/にんにく:4–6片
  • 長ねぎ青い部分・生姜薄切り:各少量
  • 水:1.3–1.5L(鍋の上限に注意)
  • 塩:**最終0.6–0.8%**を目標(仕上げで調整)

04 三相プロトコル(加圧→放圧→追い抽出)

Phase A:骨格抽出(高圧)

  • 高圧(12–15 psi)で18–22分。骨由来のコラーゲン・ミネラルを短時間抽出。
  • 自然放圧10–15分→浮いた脂と灰汁を静かに除去(濁り防止)。

Phase B:香味統合(低圧〜常圧)

  • 低圧(5–8 psi)または常圧弱沸騰10–15分。人参・なつめ・にんにくの香りを重ねる(強沸騰は濁りの原因)。

Phase C:追い抽出・休ませ

  • 80–85℃で20–30分保温。タンパクの再凝集を避けつつ味を一体化。
  • 塩で**0.6–0.8%**に整え、必要なら白胡椒ひと振り。

05 チキンの中心温度

  • 74℃以上を必達。提供前に骨際(モモ付け根)で計測。骨離れが良い状態が目安。

06 透明度コントロール

  • クリアに仕上げたい:自然放圧のみ/撹拌を避ける/再加熱は弱火
  • コク重視(半白濁):Phase Bで強めの微沸騰5分→乳化を少し促す。

07 トラブルシューティング

  • 濁る:急放圧・強沸騰→自然放圧/火力を落とす。
  • 薄い:水多すぎ・時間不足→Phase Aを**+3–5分**、または追い煮詰め
  • 臭み:下処理不足→ブランチングの徹底、生姜・ねぎの追加。
  • 皮が崩れる:加圧過多→高圧時間を**-2–3分**。

🌟 感想・考察

「素材の差は工程で覆せる」という本作の核を真正面から描き切っています。ジヨンが選んだのは“腕で殴る”のではなく“段取りを設計する”戦い方で、加圧・密閉・抽出というプロセスを一つずつ検証していくモンタージュが、料理を技術と思考の総合格闘技として見せてくれました。ここで重要なのは、彼女が奇跡的な“名素材”に頼らないことです。再現可能な工程を積み上げて味を作る——その態度が、対外競演という公共の舞台にふさわしい説得力を持っていました。

王の在り方も印象的です。彼は恋の相手である前に、まず審級者(ジャッジ)として機能します。危機では躊躇なく守り、食の場面では一口で要点を看破する。保護者・観客・評価者という立場が瞬時に切り替わることで、二人の関係性は甘さだけに流れず、相互尊重の緊張感が保たれます。雨と東莱パジョンの取り合わせは、情緒に寄りかかった小道具ではなく、湿度と粉の扱いという実務に裏打ちされたモチーフとして効いており、物語と料理理論が同じ方向を向いていることを示しました。

また、刺客の介入で政治の影が濃くなったのも収穫です。宮内の空白を狙う策謀が可視化され、競演は“美味いか不味いか”を超えて、国家の面子や権力配列に直結するゲームとして立ち上がりました。私情(望雲録/帰還の希望)と公(王権・外交)が同卓に置かれ、ひと皿の意味が幾層にも重なる設計は、このドラマの成熟を物語っています。

📂 まとめ

対決“前夜”に見せるべきことを過不足なく提示しました。すなわち、道具から勝ち筋を設計する技術的基盤、審級者としての王の資質、そして政治的リスクの可視化です。東莱パジョンが鳴らす雨音は単なる情景ではなく、工程の最適化と記憶の喚起を同時に担い、物語の温度を一段上げました。

結果として、次回以降の競演は“素材勝負”ではなく“工程勝負”として観客に読ませる用意が整っています。ジヨンは再現可能な段取りと特注の鍋という具体的なアドバンテージを獲得し、王はそれを価値づける言語化の力を持つ。望雲録という私的な目的も、国家の面目という公的な賭け金と噛み合い、勝つことの意味が立体化しました。第7話は、派手な決着を先送りにしながらも、すでに**“どう勝つか”の物語**を描き終えており、次話の一口目が待ちきれない手応えを残します。

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